杉咲花さんが主演する映画『52ヘルツのクジラたち』。
原作は、町田その子さんの同名小説です。
\この記事に書かれていること/
- 原作はどんな物語なのか
- 原作者はどんな人物か
- 原作小説を今すぐ読めるところはどこか
映画『52ヘルツのクジラたち』の原作について解説するよ。
映画と合わせて、原作小説の魅力にぜひ触れてみてください。
目次をクリックすると、好きなところから見られるよ。
映画『52ヘルツのクジラたち』原作は町田その子の同名小説【作品解説】
映画『52ヘルツのクジラたち』の原作は、町田その子さんの同名小説『52ヘルツのクジラたち』です。
\『52ヘルツのくじらたち』はこんな本/
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■書籍情報
- タイトル:52ヘルツのクジラたち
- 著者:町田その子(まちだ そのこ)
- 出版元:中央公論社
- 出版日:2020年4月18日
- 価格:単行本1,760円(税込)/文庫本814円(税込)
- 受賞歴:
- 2020年「読書メーター 読みたい本ランキング」1位
- 2020年「読書メーター オブ・ザ・イヤー2020」1位
- 2020年「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2020」4位
- 2020年「王様のブランチ BOOK大賞」1位
- 2021年「本屋大賞」受賞
小説『52ヘルツのクジラたち』の物語の背景には、児童虐待・家庭内DV・ヤングケアラー・トランスジェンダーへの不理解など、社会的な問題が描かれています。
肉体的苦痛・精神的苦痛を受け、救いを求め、声をあげても届かない人たちがいる。
中には、声をあげることすら出来ない人もいる。
作者の町田その子さんはそのような人たちを、「世界でもっとも孤独なクジラ」と呼ばれている「52ヘルツの鯨」に重ね合わせました。
「52ヘルツのクジラ」は、実際に実在するクジラです。
通常のクジラの鳴き声よりもはるかに高い周波数である52ヘルツで鳴くため、その声は他のクジラに届かないのだそう。
ゆえに、ほかのクジラにとっては存在しないものとなっているのです。
鳴き声だけは毎年観測できており、存在は確かだとされてはいるものの、そのクジラの姿を見たことがある人はまだ誰もいません。
「自分はここにいるよ」と声を上げても届かない。
認識してもらえない。
広い海をいつもたった1人で泳いでいる。
この事実から、このクジラは「世界でもっとも孤独なクジラ」と呼ばれるようになったのです。
作者の町田その子さんは、この作品を書くにあたって、以下のような想いがあったそうです。
- 世界には、52ヘルツのクジラのように生きる人が数多く存在するということを知ってほしい。
- 声をあげても届かない・声をあげることすら出来ない人たちのことを考える機会となって欲しい。
その思いは見えなくとも、1ページまた1ページと読み進めるうち、静かに心の中に浸透していきます。
小説『52ヘルツのクジラたち』には、親から虐待を受け、壮絶な環境で生きてきた三島貴瑚(みしまきなこ)という26歳の女性と、同じように虐待を受け、言葉を発することができなくなった13歳の少年が登場します。
生きる希望を失いながらも、なんとか生きてきた2人。
物語の中の話ですが、この2人がされてきたこと、それぞれの気持ちを考えると、心の中を乱暴にわしづかみにされたように、胸がギュッと痛みます。
1読者として読んだ私も、そのような思いをする人たちが1人でも減ることを切に願わずにはいられませんでした。
小説『52ヘルツのクジラたち』には、どんな物語が書かれているのか、そのあらすじ・登場する人物たちについても、少しご紹介したいと思います。
映画『52ヘルツのクジラたち』原作小説のあらすじ要約・登場人物
小説『52ヘルツのクジラたち』は、以下のようなあらすじの物語と紹介されています。
\小説『52ヘルツのクジラたち』はこんな物語/
52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一匹だけのクジラ。
何も届かない、何も届けられない。そのためこの世で一番孤独だと言われている。
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年。
孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる――。
引用元:中央公論新社『52ヘルツのクジラたち』
小説『52ヘルツのクジラたち』に登場する人物たち
まずは、この物語に登場する人物からご紹介します。
【52ヘルツのクジラたち 登場人物】
- 三島貴瑚(みしま きこ/きなこ)
大分の海辺の町にたった1人で移住してきた26歳。
虐待を受けていた過去があり、心に大きな傷を抱えている。 - 少年(ムシ/52)
貴瑚が移住してきた町に住む13歳の少年。
母から虐待を受けており、身なりはいつもボロボロで言葉を発することができない。 - 岡田安吾(おかだ あんご)
貴瑚の会社の同僚であり、貴瑚に生きる希望を与えた人でもある。
自身も性同一性障害に悩んでいたが、その苦しみを周囲に打ち明けることが出来なかった。 - 牧岡美晴(まきおか みはる)
貴瑚の高校時代の友人。
自身も貴瑚と同じような境遇を経験しているため、貴瑚に強いシンパシーを感じている。 - 村中真幌(むらなか まほろ)
貴瑚が移住した町で生まれ育った職人。
移住したての頃、貴瑚の家の修理に訪れ、貴瑚に好意を持つ。
小説『52ヘルツのクジラたち』あらすじ要約
『52ヘルツのクジラたち』に登場する人物たちは、以下のようなストーリーを歩んでいきます。
【52ヘルツのクジラたち あらすじ要約】
- 貴瑚は、ひどく汚れた子どもと出会う。
子どもは全身がアザだらけで、言葉を発しなかった。 - 少年は母から虐待を受けていた。
貴瑚は少年を保護することに決めた。
彼女もまた虐待を受けた過去があり、他人事とは感じなかったからだ。 - 少年の母に会いに行った貴瑚。
我が子とも思わない言動に怒りが湧き、少年をこの母の元に戻してはいけないと強く感じた。 - 貴瑚と少年は、クジラの話をした。
世界でもっとも孤独なクジラと呼ばれる「52ヘルツのクジラ」の話だった。 - 少年に身寄りがいないか、縁のあった場所を訪ねる。
育ててもらった叔母はすでに他界。
少年の父も母も、自分の都合で少年を捨てていったことを知る。 - 貴瑚は時折過去を思い返し、息をするのも忘れるような辛さを感じていた。
- 貴瑚と少年が町に戻ると、誘拐騒ぎとなっていた。
貴瑚は少年が母から虐待を受けていることを、周囲に公表した。 - その夜「助けて」と聞こえた気がして目が覚めると、少年の姿がなかった。
ただならぬものを感じた貴瑚が必死に探すと、少年は今にも真っ暗な海に飛び込もうとしていた。
その後、貴瑚と少年はどうなったのかーー。
望まない現実に絶望を感じながら生きてきた2人が放つ、ひとつひとつの言葉が胸に刺さります。
「虐待」という目を背けたくテーマが中心に描かれているけれど、声なき声を聴けるようになるためには、向き合わなければならないことなんだよね。
作者の町田その子さんは、この小説『52ヘルツのクジラたち』の物語を作るに当たって、以下のような気持ちを持って書いていたのだそう。
『52ヘルツのクジラたち』に関しては、「虐待に苦しんでいる登場人物をどう助けるか」という現実的な答えを、絶対に自分で見つけようと思いました。
児童虐待について、「こういう救い方もあるよ」という自分なりの回答のひとつだという気持ちで書きました
だから、読んでいる人が「もっといいやり方がある」と思ってくれたらいいですね。
引用元:ダ・ヴィンチ
読んだあと、読者さんが物語を現実に引きずって、どうすればよいかを自分なりに考えてくれることが、私は一番いいと思います。
物語に登場した貴瑚と少年は、周囲の人たちの助けも借りながら、自分たちなりの幸せのカタチを見つけ出しました。
しかし現実には、物語の中の貴瑚と少年のように「救われない人々」が存在したままです。
「52ヘルツの鯨」のように、声をあげても届かない人、声をあげることすら知らない人の存在に、周囲の人が気付いてあげること。
悲しい出来事を減らして行くためには、その第一歩が必要であることを、再確認させてくれる物語です。
また、声をあげられない人々の話は、自分たちとは遠い存在の話でもないと思うのです。
もっと身近で当たり前のようにそばにいる、自分の家族や友人、たまたま隣合った人にも該当するのではないかと。
何事もなかったかのように、いつも通り過ごしているように見えるけれど、心の中では「声にならない思い」を抱えているかもしれません。
物語に登場した少年のように、その「思い」を周囲の人に伝えていいのかも分からずに、口や態度に出せないでいる場合だってあります。
小説『52ヘルツのクジラたち』は、頭の中では分かっていても、普段は目の外に逃してしまいがちな「小さいけれど重要なこと」を見逃さないように、「ふと立ち止まらせてくれる物語」でもあると、私個人は感じました。
この記事を読んでいるあなたなら、この小説にどんなことを感じるでしょうか。
この本に出会ったことで大切な何かに気づき、助けられる何かがあったとしら、これ以上に尊いことはないのではないでしょうか。
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映画『52ヘルツのクジラたち』原作小説の作者・町田その子はこんな人物
忙しなく過ごす現代社会の中で、つい自分のことばかりになってしまいがちな私達を、ふと立ち止まらせてくれる小説『52ヘルツのクジラたち』を執筆したのは、これまでに何度も名前が出てきましたが、町田その子さんという作家さんです。
- 名前:町田その子(まちだ そのこ)
- 生年月日:1980年3月9日
- 出身地:福島県
町田その子さんは、小説を中心に執筆する作家さんです。
作家・町田その子さんといえば、以下のような代表作があります。
- 小説『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』
- 小説『ぎょらん』
- 小説『うつくしが丘の不幸の家』
- 小説『52ヘルツのクジラたち』
- 小説『コンビニ兄弟』
- 小説『星を掬う』
- 小説『あなたはここにいなくとも』
知ってる作品はあった?
エッセイ集なんかも出版されているよ。
町田その子さんが小説を書き始めるきっかけとなったのは、10歳の時に母から勧められた、氷室冴子さんの小説なのだそう。
『クララ白書』や『なんて素敵にジャパネスク』などの作品に夢中になったそうだよ。
氷室冴子さんの小説で物語創作の面白さを知った町田その子さんは、自身も「絶対に作家になろう」と決心したといいます。
高校時代は、自分なりに小説を書いてみたり、演劇部の台本執筆を手伝ったりしていたこともあったのだとか。
しかし、将来の進路を考える時期に差し掛かり、母から「手に職を付けること」を勧められた町田その子さんは、福島県内にある理容師専門学校へ進学。
卒業後も理容師として1年ほど働いたそうですが退職、いくつかの仕事を転々としたのち、20代中盤の頃結婚し専業主婦となったそうです。
「自分はこのままでいいのかな」と思いながらも、育児家事に追われていた時、子どもの頃から大ファンであった作家・氷室冴子さんの訃報を知ります。
実は町田その子さん。
学生時代は、いつか小説家になれたら、氷室冴子さんに「あなたのおかげで小説家になれたんです」と言うことを心の片隅で夢見ていたのだとか。
私、氷室冴子さんがすごく好きで。私も小説家になって、氷室さんに「あなたのおかげで作家になれたんです」って言うのが夢だったんですよ(笑)
引用元:ダ・ヴィンチ
氷室冴子さんの訃報を受けて、「夢の半分だけでも叶えよう、絶対に小説家にはなろう」と思いが定まったそうです。
そんなとき、憧れの人が亡くなって、こんなことをしていていいのかって…夢の半分だけでも叶えよう、絶対に小説家にはなろうと思って書きはじめました。
引用元:ダ・ヴィンチ
その時、町田その子さんは28歳でした。
固い決意の元、再び小説を書き始めた町田その子さん。
2016年には『カメルーンの青い魚』という作品で、新潮社が主催する「女による女のためのR-18文学賞」の大賞を受賞しました。
ちなみに、この賞への応募は2度目の挑戦だったそうです。
大賞を受賞したことで、作家としての切符を手にした町田その子さん。
同年には、小説雑誌『小説新潮』へ『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』という作品を寄稿。
以降、毎年のように作品を創作しては、単行本として出版されています。
子供の頃からの夢を諦めないで良かったね。
映画『52ヘルツのクジラたち』原作小説を読んだ人の感想・レビュー
映画の原作となった小説『52ヘルツのクジラたち』を読んだ方々からは、どのような反応があったのでしょうか。
小説を読んだ方々の感想・レビューを見てみると、以下のような声が寄せられていました。
みんなの声もぜひ読んでみて。
世の中悪い人ばかりじゃないんだなって感じて、ホロリ嬉し泣きしました。
主人公は過去に自分が犯した罪の意識から、母親から虐待を受けている少年に手を差し伸べる。
その行為は贖罪と言ってしまえばその通りだが、警察に通報して後は知らんぷりでも良い状況下で少年のために行動できる優しさと頼もしさを持った主人公は素敵だと思った。『ひとというのは最初こそ貰う側やけんど、いずれは与える側にならないかん。いつまでも、貰ってばかりじゃいかんのよ。』
主人公の芯の強さは過去に絶望の淵から救ってくれた恩人から与えて貰ったものでもあり、主人公も過去に声ならざる声を挙げていたひとりだった。
人生を変えてしまうほどの出会いが再び人生を変えるほどの出会いに結びつける…人との縁って不思議。
ただ、その恩人との別れの場面は衝撃的でいたたまれなかった。どれだけ親しくてもその人が本当はどういう人でどういう葛藤を抱えているかなんて分からない。
心の奥は同じ境遇を持った者同士でしか埋めることは出来ないのかも知れないと思うと哀しくなる。私ももう””与える側の人間””だ。誰に何をかは分からないが。
少なくとも、本書を読み過去の経験は良いも悪いも生きる上で逞しさに繋がると改めて感じた。今も何処かで誰かの52ヘルツのクジラの声が聞こえるのだろうか。
引用元:ブクログ
正直、主人公のように手を差し伸べる勇気が出せるか自信はない。
でも耳を傾ける努力はしようと思った。
どんな過去でも乗り越えて今を生きている私達にしかできないことは必ずあるはずだから。
52ヘルツのくじらは、
他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く
世界に一頭だけのクジラ。誰にも届かない、何も届けられない。私たちはみんな52ヘルツの声で鳴いている。
誰かに向かって届かない声でSOSを。これは電車の中で読んじゃダメです、マスクしてて助かりましたが、涙止まらず。
苦笑不可抗力としか言えないし、抜け出す方法もわからない、気力も搾取される、「神さまを待っている」同様の蟻地獄のよう。
アンさんの想いに、涙が止まりませんでした。
それは過酷すぎる、って。
神様がいるならどうしてって。おかしくなるのも、踏み外すのも簡単だけど、それでも手を差し伸べてくれる人がどこかにいる。
魂の番。心が揺れて涙が止まらない場面が多々ありました。
引用元:ブクログ
とても良い読書でした。
町田さんの他の作品も読んでみようと思います。
キナコはあまりにも人生を搾取されすぎてきた。
それでもなんとか命を持たせてきたのは、きっと魂の番に出逢うためだったんだと思う。アンさんに出逢い、彼女は過去の人生に区切りをつけて、新しい人生に歩み出すことができた。
彼女の誰にも届いてなかったと思った52ヘルツの声はアンさんや美晴には届いていて、気がつかないうちに求め合うように共に歌っていたんだと思う。
でも大事なものほどその大事さに安心しきって失ってしまうこともある。多くのものを失ったキナコも、以前のキナコのような子に出逢い、放っておけなくて助けるつもりが救われていく。
周りの人間に疎まれていたその存在を求め、そして求められるようになる。
誰にも届かないと思っていた声は、振り絞るようにあげた小さなものでも、その声を聴いてくれようとする人が現れ、自然と周波数が混じり合っていく。いまこうして出逢い、お互いに声を届けあい、さらには心を通わせうことができるなんて、なんて奇跡なんだろう。
引用元:ブクログ
そう思わせてくれた大切な作品。とにかく泣いた。
クリックで開きます☺︎
読者の方の声を読んでいると、作者・町田その子さんの想いは確実に届いているのだなとヒシヒシと感じました。
「気付いてあげるべき人たち」がいること。
そして、この本を手に取った人々が「耳を傾けていこう」という思いになっていること。
町田その子さんのしようと思ったことは成功していて、それゆえに、作家としての町田その子さんの才に感服の思いでいっぱいになりました。
ひとつの物語が、ひとりの人の何かに変化をもたらす。
これは紛れもない事実で、計り知れない力を持ったものです。
『52ヘルツのクジラたち』という物語が、今もなおどこかで鳴いている「孤独なクジラ」の声をすくいあげる大きな連鎖の始まりとなりますように。
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映画『52ヘルツのクジラたち』原作小説が今すぐ読めるところ・買えるところ
原作の小説『52ヘルツのクジラたち』が今すぐ読めるところ、買えるところは以下の通りです。
小説『52ヘルツのくじらたち』を読み始めるなら、断然「電子書籍での閲覧が便利でお得」です。
書店が閉まっている夜中に急に読み始めたくなっても大丈夫。
本を買いに書店に行く時間がなくても大丈夫。
電子書籍なら、いつでも、手持ちのスマホやタブレット・パソコンから読み始めることができます☺︎
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電子書籍を配信しているサイトの中では、ebook japanがお得です。
初めて利用する方であれば全員もらえる「初回限定クーポン」を利用すると、町田その子さんの『52ヘルツのクジラたち』を、300円程で読むことも可能。
「お得になった分で、欲しかったあの本もまとめ買い」というオマケ的な楽しみもあります☺︎
ebook japanは、クレカ決済のほか、電子マネーやスマホ決済も使えるよ。
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映画『52ヘルツのクジラたち』原作小説が誕生するまで
町田その子さんが、小説『52ヘルツのクジラたち』という物語を書こうと思った最初のきっかけは、世界でもっとも孤独なクジラと呼ばれる「52ヘルツのクジラ」の存在を知ったこと。
当時の町田その子さんは、『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』という連作短編集の執筆中で、その過程で海洋生物についていろいろと調べていたそうです。
孤独なクジラのエピソードに興味を持った町田その子さん。
「ちゃんと掘り下げてしっかり書いてみたい」という思いが湧き、しばらく自分の中で温めておいたのだそう。
「このクジラのことを知った時、面白いエピソードだと思いました。でも、『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』は連作短編集だったので、これは短編に収めきれないだろうと思いました。自分の中でちゃんと掘り下げてしっかり書いてみたいという気持ちがあったので、しばらく置いておくことにしたんです」
引用元:好書好日
母として子育てをする立場でもあった町田その子さんは、ニュースなどで「児童虐待」についての話を聞かされる度、「どうしたら虐待を受けている子ども達に救いの手を差し伸べてあげることができるのだろう」と考えていたといいます。
その方法の1つとして思い付いたのが、小説で「声なき声」の存在を伝えるという方法でした。
「私にも子どもがいるので、虐待児童のことは以前からずっと気になっていました。ニュースを見ながら、虐待された子はどうしたら救いの手を差し伸べることができるんだろうと考えていたんです。また、声なき声にもいくつか種類があって、声をあげたい人、声をあげるのを諦めた人、そもそもあげることを知らない人などがあると思うんです。そういう人は虐待児童だけでなく、DV被害者やトランスジェンダーなどにも存在していると思い、いろんな人の声なき声を小説に織り込んでみることにしました」
引用元:好書好日
小説『52ヘルツのクジラたち』は、当時の町田その子さんにとって初の長編小説。
短編には収まりきれないだろうと心のうちに温めてきた題材を、思う存分カタチにできる絶好のチャンスでもありました。
こうして書き始めた『52ヘルツのクジラたち』。
綴られた物語に多くの人が心を打たれ、「目を背けてはならない大切なこと」に向き合える機会を与えてくれています。
子どもの頃は、いつもクラスの端っこで本ばっかり読んでいる子どもだったという町田その子さん。
自身がイジメにあった時、「この本があったから明日も頑張れる」という経験をしたこともあったそう。
作家・氷室冴子さんに憧れ、自分も作家になろうと決意した際には、「誰かの背中を押してあげられる、もう一歩進もうと思えるようなものを書こう」という目標も立てたそう。
「声なき声」の存在を届け、孤独に生きる人には共感と希望を伝える。
例え今が望まぬ環境だとしても、光の当たる場所は必ずあることを伝えたい。
自身も、たった一冊の本に何度も助けられてきたのだから。
小説『52ヘルツのクジラたち』が、誰かの救いの手になるような物語となってくれれば。
そのような想いで、この作品をこの世に誕生させたのだと、町田その子さんの語る言葉の数々から感じました。
1つの物語との出会いは、奇跡のようなものだから。
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【まとめ】映画『52ヘルツのクジラたち』原作小説は孤独なクジラに光を届けていくために必要な物語だった
「誰にも届かない声などない」
町田その子さんが語った言葉です。
「誰にも届かない」のは、受け取る側がその存在を認識しようとしていないからではないか。
町田その子さんの放ったメッセージは、一見厳しい言葉のようにも感じますが、その裏柄には「どこかで助けを求めている、まだ見ぬ人を助けたい」という優しさが込められています。
聞き取りづらく、認識しづらい、誰かの小さなSOS。
救い出せる立場にある側が耳を澄ませてあげる努力をすれば、1人でも多くの人を救えるのではないか。
児童虐待、家庭内DV、ヤングケアラー、精神的苦痛や肉体的苦痛に小さく丸まりただ耐えるものたち。
他人事として見て見ぬふりをしてしまったら、届くはずの微かな声もかき消されてしまう。
映画『52ヘルツのクジラたち』の原作となったこの小説は、私たちに大切なメッセージを投げかけてくれる一作です。
耳を澄ませる心を持とう。
たとえ52ヘルツの聞き取りにくい声でも、「届かない声などない」のだから。
1人でも多くの人に読んで欲しい物語だよ。
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